特例財団法人における最初の評議員の選任について−PART2-
2006年10月5日

非営利法人総合研究所(NPO総研
主席研究員 福島 達也

最初の評議員を置くための具体的な手続方法
(1) 移行するまでに評議員や評議員会を置くと決定した場合の手続の流れ
新制度の法人に移行するまでに評議員・評議員会を置く場合の手続は、次のとおりです。

@ 法人内部で評議員を置く旨・最初の評議員の選任方法・定款の変更案を決定
移行前に評議員・評議員会を置くことを法人内で検討し始めた法人の理事は、同時に、最初の評議員の選任方法について検討するものと想定されます。
具体的な選任方法としては、現在寄附行為の変更について理事及び(法律に基づかずに置いている)評議員の4分の3以上の議決を必要としている法人は、それと同様の手続とすることなどが考えられますが、一般社団・財団法人法でもともと想定されている方法でも問題ありません。
最初に評議員を選任する場合に限っては理事や理事会が選んではいけないという制限はありませんが、各法人の実情に応じ、理事を適切に監督・牽制し得る機関を選任する方法としてもっともふさわしい方法とする必要があります。
また、評議員を置くことによって定款を変更する必要がありますので、評議員を置く旨や選任・解任の方法のほか、評議員以外に関する規定(理事・理事会に関する規定や代表理事に関する規定等)も整備しなければなりません。なお、最初の評議員の選任方法は、定款に記載する必要はありません。

A 最初の評議員の選任方法・定款の変更について所管官庁の認可を得る
理事は、法人内部で正式に評議員・評議員会を置く旨の決定をし、また、最初の評議員の選任方法としてその法人にとって最も適切であると思われる方法を決定します。
その後、その方法について所管官庁の認可を受けます。

B 認可を得た方法で評議員を選任
Aで認可を得た方法により、具体的に評議員を選任します。また、@で述べた定款の変更案の決定は、この段階で行うことも可能です。ただしこの場合は、定款の変更について改めて認可を得なければならず、評議員の任期は定款の変更に関する認可の日以降に開始することになります。

C 必要な事項について登記
定款の効力が発生した後、主たる事務所の所在地を管轄する登記所において、2週間以内に登記をします。
登記事項は、評議員の氏名のほか、代表理事を新たに定めた場合は代表理事や理事について、また監事を置いていなかった場合は監事についてなどです。
登記をした後は、従前どおり所管官庁へ届出を提出しなければなりません。

(2) 移行と同時に評議員や評議員会を置くと決定した場合の手続の流れ
 新制度の法人に移行するまで現行の機関設計を継続し、移行と同時に評議員・評議員会を置くことも可能です。この場合は、実際に移行の申請をする前に、最初の評議員の選任方法について所管官庁(移行の申請をする行政庁と同じとは限りません。)に認可申請しておかなければなりません。

@最初の評議員の選任方法について所管官庁の認可を得る
移行の登記にあたっては、最初の評議員の選任方法について所管官庁の認可を得たことを証する書類を添付する必要があります。したがって、厳密に言えば、法律上は移行の登記までに認可を得ておけばよいのであり、移行の申請をするまでに認可を得る必要はありません。
しかし実際は、移行の申請前に最初の評議員の選任方法を決め、所管官庁の認可を得て、さらに評議員の具体的な人選も済ませた上で、万全を期して、移行の申請をすることが望ましいと考えられます。特に公益財団法人への移行の認定を申請する場合は、各評議員について欠格事由に該当しないか審査があるので、申請までに確実に選任しておく必要があります。

A法人内部で移行の申請をする旨と移行後の定款の案を決定
通常の一般財団法人又は公益財団法人として必要な定款の規定を整備し、不要となる規定は削除するなどしなければなりません。
この手続は、@の過程と並行しても差し支えありません。

B 移行の認定・認可を申請
法人内で必要な手続を完了した後、内閣総理大臣又は都道府県知事に移行の申請をします。

C 認定・認可を得た後、移行(解散・設立)の登記
内閣総理大臣又は都道府県知事から移行の認定・認可を得た後は、主たる事務所の所在地を管轄する登記所に2週間以内に、従たる事務所の所在地を管轄する登記所に3週間以内に、移行(解散・設立)の登記をしなければなりません。
そして登記をした後は、内閣総理大臣又は都道府県知事及び所管官庁へその旨を届け出る必要があります。

どんな定款にするべきか
 移行する場合は当然に一般社団・財団法人法や公益法人認定法にそぐう定款とする必要がありますが、移行に先だって評議員制度を導入する場合においてもそれまで適用が猶予されていた機関設計に関する一般社団・財団法人法の規定が適用されることとなります。その結果、定款を一部変更したり、それ以外にも措置すべき事項が生じます。以下に例をあげます。

@ 新たに置くべき規定例
評議員・評議員会・理事会(・監事)を置く旨(上記(1)の場合に限る。)
評議員の選任・解任の方法

A 不要となる規定例
理事、監事等の任期に関する規定
(※ 一般社団・財団法人法の規定に反する場合に限る。)
一般社団・財団法人法に基づかない評議員・評議員会・理事会を置く旨の規定

B その他、しなければならないこと
理事が1人又は2人だった場合、3人以上とする
理事会による代表理事の選任
登記の変更(上記(1)の場合は変更の登記、(2)の場合は移行の登記)

このように、定款変更案や評議員会の設置については、とても複雑で混乱が予想されます。最善の方法、最良の定款作りについては、私たち非営利法人総合研究所に是非ともご相談ください。お待ちしております。


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